エンジンと音1:V6ではダメ!?心を揺さぶる「官能サウンド」の理論


昨今F1ファンの中では、V6エンジンが採用されてからの排気音に落胆してしまったという声をよく聞きます。

V12、V10、V8の甲高い美しいく激しいF1サウンドは、F1ファンに一種のマスターベーションのような高揚感を提供し、ファンを虜にしていたと思います。

このブログでは、そんな高揚感をマイカー(V8、V6、直6、直4)で得るにはどうすればいいか、を書いていきます。

今回の記事はその導入として、他の記事の内容理解を助ける知識をまとめています。

内容は、官能サウンド個人研究家sionに書いてもらいました。

併せて、今のF1V6エンジンで、なぜ官能的な音を出す事が難しいのか、その疑問も解消されるはずです。

目次

エンジン編

Q:結局V6っていいの?

A:軽量、ハイパワー、静粛とバランスの良い機関です。
爆発順序が1,2,3,4,5,6となるため、等間隔爆発・排気で排気干渉も無く、美しさにつながる整った排気音が得られます。さらにクランクが短く、余分な部品も少ないため、高回転化も可能です。

Q:V6でもかつてのF1みたいな乾いた響く音が出るの?

A:出ません。
ただし、努力すれば近い音は得られます。V6は等間隔爆発で排気干渉は無く、キレイな音が出ますが、「乾いた音」や「響く音」は、実はその影響は少ないのです。

Q:なぜV6が一番バランスがいいの?

A:理論上、二次振動が出ないからです。
二次振動は回転振動や不快感に繋がるものです。しかし二次振動を出さない為にはバンク角が60°である必要があります。(60°×6シリンダ=360°)
*二次振動:ピストンが上下(クランク180°)して発生する一次振動に対し、クランク90°毎で発生する振動。上下運動が回転運動に変換(トルクになる)されるときに偶発する。

Q:なぜV6にバンク角60°が必要なの?

A:上下運動を回転運動に変換するクランクシャフトにかかる負荷を均等にできるからです。
バンク角はクランクシャフトの各コネクションロッドの位相差に影響されます。V6の場合、クランク1回転(360°)で3気筒爆発・排気しますから、2回転(720°)で全シリンダが仕事を完結するのに、コネクションロッドの位相差が60°なければなりません。位相差60°であれば次の爆発は120°後(60°後は排気)であり、120°×6で720°になります。
*位相差→角度のズレ。この場合クランクピン毎の角度差。

Q:なぜV6だと二次振動が出ないの?

A:上記60°バンクのV6であれば、カウンタウェイトを設置する必要がないからです。
原則、爆発したシリンダの隣のシリンダが次の爆発になりそのため、クランクシャフトにねじれ振動が発生しなく、振動を消すためにカウンタウェイトを設置する必要がありません。二次振動は多くがカウンタウェイトに要因するものです。
*カウンタウェイト:ピストンの反動を利用して回転力を維持するもの。遊園地の(遊園地)(バイキング)についてるあれ。

Q:乾いた音を出すにはどうしたら?

A:乾いた音、と表現される排気音は、いわゆるヌケがいい音と同義となり、よく抜ける排気音が乾いた音となります。
このヌケと言うのは、簡単に言うと排気出口から抵抗なく排気されることです。等間隔爆発で排気干渉が無いことも必要ですが、排気管の容量・排気集合管の集合部までの長さ・排気管の曲率に影響されます。排気管の容量より多すぎても少なすぎてもダメです。

例えると、コップ(排気管)に水(排気容量)がこぼれることなく留まっている満水状態を思い浮かべてください。これを排気管全体で実施出来れば、抜ける排気管が作れます。

Q:3000ccの排気量のエンジンなら、排気管全体が3000ccになるようカスタムすればいい?

A:違います。
複雑な理論が必要ですが、簡単に言うと、
① 各シリンダから集合管集合部までの容積をシリンダ(単筒)容積にする
② 集合部から出口までの容積をシリンダ容積の合計に合わせる
これらは排気干渉を防ぐ為だったり、排気脈動効果(後述)を利用する為に行う対応ですが、これらのことを考慮せずにエンジンルームが作られていると、取り回しが出来ず改善する事がほぼ不可能となります。(国産直4直6に多い)

周波数(音)編

Q:高くて響く音はどうやったら出せるの?

A:倍音を発生させます。
まず、高い音と響く音は別の要素が影響するため、分けて考える必要があります。まずは高い音に絞って説明します。さらに音は周波数であるという認識を再確認してください。同じ周波数の音が連続すると、音の高さ(周波数)が2倍になります。これを倍音と呼びます。

1気筒500ccの爆発音は一般的には50hzとされています。そうすると4気筒では200hz、6気筒では300hz、8気筒で400hzになります。また、この周波数はピストンスピードによるもので、速ければ高くなりますから、仮にV8で6000rpm時に400hzの音が出るエンジンであれば、12000rpm時に800hzの音となり、かなり高音と言えます。

ちゃぶ台を返すようですが、4気筒で8気筒の音の高さを出すには、2倍の回転数が必要だと言うことです。逆に言うとフェラーリF12ベルリネッタの様に12気筒で8000rpm回れば、高音が出せます。笑

Q:響く音を出すには?

A:排気管の集合部で、周波数を若干ずらします。
響く、というのは音と音が共鳴して音圧を増大させていることです。これを音のうなり、といい、ごく近い周波数が連続すると、うなりによって音が響きます。これはほとんどの自動車メーカーでは無視されるものですが、フェラーリやマセラティ、一部ポルシェやLFAなどが採用しています。

例を上げると、V8で右バンク400hzの場合、左バンクを404hzとすると、集合部でうなりが発生し、いわゆる鳴く音が生まれます。この特性上、V型エンジンが有利であり、直6などでやろうとすると、かなり考えた上で6-2-1-2など配管を工夫しなければなりません。

まとめ:乾いて鳴きの入った高音を出すには?

結論を言うとV6では難しいと言うことです。

理想はV8以上。

だからと言ってV6がダメと言っているわけではありません。

近づける事はできますし、独自の色を出すことはできます。

そのヒントを以下にまとめましたので、参考になれば幸いです。

① 等間隔排気(エキマニカスタム)
② 排気圧間の谷間を減らす(エキマニのカスタム)
③ 排気管の容量を気筒容量に合わせる(エキマニのカスタム)
④ うなり効果を誘発する(センターパイプのカスタム)
⑤ ピストンスピードを上げる(高い回転数で運転する)
(⑥ 多気筒化する=車を買い替えるかエンジンスワップ)


作成:sion(官能サウンド研究家)
編集:mushitaro

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