センターパイプカスタムで感性を刺激する

排気音(エグゾーストノート)のカスタムについて、ユーザー目線で語られたコンテンツは今まで無かったように思う。

チューナーが、自分達の製品の良さを主張するコンテンツはよく見かけるが、ユーザーが”自分の好みの音を選ぶ”のに役立つコンテンツは見た事がない。

今回は、高額なマフラーやエキマニカスタムの失敗を極力減らしたいと思っている方に向けて書いた。

正直自分の好みが何なのかわからない、という悩みもあると思う。

そんな方は、このブログの他の記事を参考にして頂き、自分の好みを理解することから初めてほしい。

今回の記事は、自分の好みが明確で、それを"時短かつ低コスト"で実現するのを助ける記事だ。

それから、この記事の内容を理解してもらう前にこちらの記事(エンジンと音)を参考にしてもらうと、より理解が深まるはずだ。

目次

周波数・集合・スピード

3要素として僕が定めたのがこの3つ。

好みの排気音を造る場合、細かく言うと膨大に突き詰める箇所がある。

カムプロフィールや、排気管の材質、厚みなどだ。

しかし、全てを網羅するにはかなりの苦労を要するし、原理としては少々解りにくいという問題点があるため、あえて3要素とした次第だ。


周波数

音は、空気の振動が伝わるもの。

管楽器でいえば、唇にあたる、音の発生源。

楽器をやったことがある人はわかるだろうが、口をすぼめて息を吹き、唇がブリブリ振動するあれ。

息を早く吹いて唇が速く振動するとプーと高い音がする。

そう、唇が振動する回数が遅い=音が低い=周波数が低い=エンジンのシリンダで起こる爆発と爆発の間隔が広い、ということだ。

当然、回転数が上がれば間隔は狭くなり、周波数が高くなる。

車のエンジンは2回転で1回爆発するから、6000rpmなら3000回爆発する事を意味する。

rpmは1分あたりの回転数なので、周波数で使う秒単位に直すため、3000を1/60にすると、50。

これがエンジンサウンドの根源で、50hzと表せる。

これは単気筒での話なので、V8なら8倍して、400hz(50hz×8気筒)の音が出ることになるのだ。

だから、直4でV8の高さの音を作るには、V8なら6000rpmでよいところ、直4では12000rpm回さなければならない。

高音を出すには、搭載エンジンで限界が決まってしまうのだ!

音にこだわるなら、安いからといって安易に直4などを選ばず、V8以上を強くオススメする。

よってここから先は、V8で良い音を出すことを前提に、参考にしてもらいたいことを書いていく。


集合

シリンダでの爆発が周波数になると、次はパイプとパイプがくっつく「集合部」に到達する。

これはエキゾーストマニホールド(エキマニ)の事を指す。

実は、楽器と同じく集合部までのパイプが短い方が音は高くなる。

しかし実際は、車の用途(商品性)を考え、使いたい回転域でピークパワー(パワーとトルク)が出るよう長さを決めることがほとんど。

エキマニはパワーとトルクにとても影響のあるパーツだが、今回は話が発散するので良い音を出すことに限定して話を進めさせてもらう。

話を戻すとこの「集合部」で排気が合流した時に「倍音」となる。

この倍音が感性に訴える「響く音」である。

この響く音は、演出によって人間への伝わり方が大きく変わる。

例えば広いホールや、トンネルで声が反響するイメージが良いかもしれない。

これをエキマニで演出する事ができる。

例えば、集合部直後はパイプ径を太くし、すぐに少し細く絞る。

それから徐々に太さを戻していく。

こうすると、集合部で合流した振動(周波数)は太い部分で反響し、増幅される。

これは、排気が細くなった部分を抜けるとき、スピードも増幅され、この「速い排気」とパイプ壁面で減速した「遅い排気」が振動の干渉波によるものだ。

この部分は楽器で言えばちょうどマウスピースにあたる。

僕がコルベット C4 ZR-1に乗っていた頃に試したことがあったのだが、あのボロボロ音がかなり共鳴して音が改善した。

ただ副作用として、トルクが下がるデメリットも併発した。

恐らく排気の掃引効果が、低下したからだろう。


スピード

これは排気のスピードを維持すること。

このスピードの発生源はピストンで爆発を終えた後、ピストンが排気を押し上げバルブから出ていく勢いをイメージしてもらいたい。

その排気が一次集合部(エキマニ)で合流し、絞り部分から徐々に広がるパイプ部分で、スピードアップした排気が次の二次集合部で反対のバンクと合流。

この集合部で排気がわずかに違う周波数で合流すると「うなり」が生じる。

V8の場合二次集合部で合流した後、また分岐させる場合がある。

これは先程のうなりをさらに増幅させる為に、意図的に行っている。

このとき、分岐の先のパイプが長すぎると、スピードが落ち、振動が減衰し音質が悪くなる。

音にこだわる場合、ここで初めてマフラー交換の真価が発揮される。

なぜらな純正マフラーは、騒音配慮の為にわざとパイプを長くしているからだ。

後ろから見た時に、湯たんぽみたいのがチラッと見える車があると思うがソレである。

リコーダーを思い出して欲しい。

息を速く吹くと高く、ゆっくり吹くと低く。(スピード)

指で穴を塞いでいくと低くなり、穴が開いていくほど高くなる。(パイプが長いか短いか)

長いときは息の抜けが悪くなり、キレイな音を出すのに苦労したはず。

そしてくわえた先端付近の「くぼみ」を指で塞いでいくと共鳴しなくなり、音が出ないのだ。

これらによって、エキゾーストノートで、重要な3元素は「周波数」「集合」「スピード」だということがわかってもらえたら嬉しい。


コスパの良いカスタムは「センターパイプ」

じゃあ排気で一番費用対効果の高い交換部位はどこか?

「集合」にあたるエキマニを変える事だが、記事の最初の方でも書いた通りパワーとトルクに与える影響が大きくこれらを低下させるリスクが高い。 

  *参考:乾いた音のチューニングで有名なSACLAMはE46M3のエキマニ開発で相当苦労し、最終的には諦めた。

なので「センターパイプ」を変えることだ。

エキマニと比べると費用対効果が高いし、トルクが下がってしまうリスクも軽減できる。

そしてうまくチューニングできればパワーやトルクも上げる事もできる。 

  *参考:SACLAMはセンターパイプのチューニングで音質向上とパワーアップを両立させた。

さらにセンターパイプにはX型、Y型などいくつか種類がある。

Y型のように「集合」の角度が鋭いとより高く、X型の様に角度が緩いとよりまろやかな音質になりやすい。

センターパイプが左右で全く繋がらない物なら、H型やX型にするだけで変わってくるし、X型になっているならY型にしてみるのも音に変化があって面白い。

こだわりのエンジンを選んだら、さらにそこから自分独自の演出の選択肢が増えるので、オススメのカスタムだ。


文:sion(官能サウンド研究家)
編集:mushitaro

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