自分が輝けるように 〜FLAT OUT流エキゾーストの考え方〜
昨今、ネットワークとアフターパーツの拡充により選択肢は大きく広がる中、ユーザーが求める「自分が輝けるサウンド」を個人で探し当てるのは逆に難しくなった。
それで今回は、ユーザー自身の考える理想の輝き方の選択を提供出来るようにするため、我々の考え方を提示したいと思う。
自分が輝くには楽しむ、楽しむためには高揚感
ドライバーがアクセルを踏み込み、クルマが加速する時、誰しも少なからずアドレナリンが分泌され高揚感を得る。その仕組みは、目で見る視覚情報(景色が流れるスピードが速くなる)と、脳で理解している情報(タコメーターが上昇していく)に、そこに耳で感じる情報(音が高くなっていく)が重なり、高揚感を得ているのだ。
この3つの情報のうち、視覚と脳における情報は変えることが難しいから、耳の情報を変えていく。
これが音を求める所以だ。
さらに、耳で感じる情報は情報源が音であるために(音の素は振動)、副次的に「肌で感じる」という所謂感覚的な部分も向上させられる。
クルマに、サウンドチューニングを施すことでクルマが楽しくなる。
子供っぽいが、これがなくして「自動車文化」の持続・発展はないと思うのだ。
音量ではなく音質という考え方
音量は案外簡単に大きくできる。皆さんご存知のとおり、マフラーテール部に付いているサイレンサー(消音器)を取ってしまえばいい。
ネットで買った2万円のサイレンサーレスのテール部に交換すればとりあえず大きくはなるだろう。
がしかし、これでは車検は通らないし、黒と白のセダンに捕まることもある。
なにより、サイレンサーによる抵抗が減るのだからどれを選んでも「まず大きく」なる。
わかりやすく、簡単だ。
しかし音量は簡単に大きく出来ても音の高さや質といった、タコメーターにシンクロする高揚感は得られない。
そしてそれはどうやったら得られるかわかりにくく、比較もしにくいため、2の足を踏みがちだ。
我々の愛車はレーシングカーではない
レーシングカーは勝利しなくてはならないから、音質なんかよりまずはパワーを得る。しかし究極のパワー=超高効率エキゾーストとなり、結果的に世のエンスージアストが興奮するようなサウンドを奏でている。普段使いするような我々の愛車では、それは不可能に近いから、サウンドチューニングをして効率が改善されることで、逆説的にパワーも上がる。
音質を変化させる要素とは?
解りやすくするため、パワーやトルクの特性は置いといて、単なる単管での要素、という条件で説明する。音の伝わり方
単管パイプでは、大きく2種類の伝わり方がある。1つはパイプの中の空気が振動するもの、もう1つはパイプ自体が振動するものだ。
たとえば、パイプを手に取って、片方の穴から息を吹き込んで反対側で音がする場合と、パイプ自体を叩いて、音がする場合だ。
今回は、エキゾーストサウンドにより影響の大きい、パイプの中の空気が振動する場合を取り上げてみる。
マフラーの長さで何が変わる?
マフラーを構成する、パイプの長さの違いでどのような音の変化があるのだろうか。実は、同じ径のパイプなら、より長いほうが音は低く、より短い方が音は高くなる。
リコーダーを思い出してほしい。
穴を指で全て塞ぐと低い音が出るが、穴から指を離していくと音が高くなっていく。
マフラーも、同じ径なら、配管が短い方が高い音が得られる。
同じ波長の周波数でも、管の長さが長くなると、抵抗が増え、音の高さは下がってしまう。
さらに、高倍音の周波数は低音に比べて減衰しやすいため、出口で高倍音を取り出す前に消えていってしまう。
マフラーの太さが違うと何が変わる?
マフラーのパイプを太いものに交換するチューニングは、クルマ好きなら誰でも考えたことがあるだろう。「マフラーが太くなる=高回転時の排気ガスを外に出しやすくする」
ということだが、実は排気流量は増えるものの、排気速度は下がってしまう。
水に置き換えてみると
水道蛇口にホースを付けて水栓を全開にする。全開直後は、水栓直前まで排圧が掛かっていたため、勢いよく水が出るが、次第に勢いが戻る。ただし、流量は最大だ。
そこで、ホースの先を少し潰して押さえると、排圧が掛かり流量は減るが、水は速く出てくる。
また、少し蛇口側を潰して押さえると、さらに水は速く出てくる上に、遠くまで直線を描いて飛んでいく。
このことから、「太くすると排気流量は多くなるが、排気速度が低下する」ことがわかる。
これは、太くなることで抵抗がなくなり空気が外に出やすくなるからで、この出やすさを「アドミッタンス」と呼ぶ。
逆に抵抗がかかる、空気の出にくさを「インピーダンス」と呼び、これが大きいと管内で音がこもり、音は低くなる。
ただし、ホースの例のように、出口ではなく途中を細くして排気速度を高めることで、音を高くすることも出来る。
リコーダーをゆっくり吹くと柔らかい低い音が出たのに、速く吹くとピーと高い音が出たのを覚えているだろうか。
空気が速く進むことで、新たに振動を生む箇所があれば、速ければ速いほど生まれる振動(周波数)は細かくなり、高い音を作ることが出来る。
マフラーのテールエンドを細くしても、ただ大気に開放されるだけなので高くはならないのだ。
…如何だっただろうか。
このような理論や考え方を掘り下げ、駆使することで、ユーザーがそれぞれ好む音質に調律出来た時、「自分が輝けるサウンド」を手にした人こそ、「自分が輝くための愛車」というオリジナルブランドを作る1要素になるのではないだろうか。